[ 検査結果でわかること 12 ]

尿 酸 が 高 い 時

日本臨床検査医会 木村 聡



2002.03.01


 尿酸とは、「プリン体」といわれる有機物の代謝産物です。デザートに出てくる、あの甘〜いプリンとは何の関係もありません。いま流行の遺伝子を構成する「核酸」が、体内で分解されて出てきた産業廃棄物みたいなものです。血液中の尿酸は、筋肉や肝臓、骨髄などで作られるほか、食物から供給されます。これが過剰になると、「痛風」といわれる病気を発症します。「風が吹いても痛い」といわれる痛風は、美食家や大酒家に多いとされ、代表的な生活習慣病として知られています。
 痛風の典型的な症状は、足の親指の付け根が、ある日突然、激烈に痛み出すことで現れます。親指以外にもかかとや、足の甲に出る場合があります。これは血液中に溶け切れなくなった尿酸が、関節に析出し、これを処理するために集まってきた白血球が、尿酸の結晶を食べまくる際に強い炎症を起こすことで起こります。はじめは一週間くらいで自然に治まり、何もなかったような状況が一年ほど続きますが、過度の飲酒や筋肉疲労が溜まると再び出現、徐々に無症状の間隔は短くなり、ついには常時痛みに悩まされる事となります。血液に溶け切れなくなった尿酸は、あちこちの関節や耳たぶに沈着して、「痛風結節」と呼ばれる「コブ」を作ります。それだけではありません。尿酸は名前の通り、尿の中に排泄される物質なので、尿を作る工場である腎臓にも沈着して、真綿で首を絞めるようにジワリ、ジワリと機能を障害、最後には腎不全で透析になることもあります。さらに尿中でも結晶となり、尿路結石症という、これまた激しい下腹部痛を起こします。グルメのツケか、あわれ食材となった動物のタタリか、とにかく厄介な病気ですが、検査をしてしっかり対処すれば、克服は可能な病気です。以下のことに十分注意してください。

 尿酸の基準値は5mg/dl程度ですが、不摂生のためでしょうか男子でやや高く、8mg/dlを超える人で痛風発症のリスクが高くなります。発作の真っ最中では必ずしも高くはありません。痛みには消炎剤が効きますが、血中尿酸値を下げるには、まず食事療法。肉類、とりわけプリン体を多く含む内臓類を控え、尿酸産生を促進するアルコールを控えることです。肥満や高脂血症を合併する例が多いので、有酸素運動(早い話がたくさん歩くこと!)で減量をはかります。それでもダメなら薬物ですが、尿中の「クレアチニン」濃度を尿酸とともに測定し、「尿酸クリアランス比」を算出、クスリのタイプを選びます。尿酸の排出が低下しているときはプロベネシド(商品名ベネシッドなど)、尿酸の合成が活発な場合はアロプリノール(ザイロリックなど)を内服します。また尿酸が尿中で結石に成長しないように、尿のpHをアルカリ性(少なくとも6.5以上)に保つ必要があります。何せ体質と生活習慣の病気ですから、息の長〜い治療が必要です。(改善せず)
 このほか腎障害がないか尿沈渣を調べ、発作時はCRPなど炎症マーカーを測ります。
 なお、尿酸が高くなる疾患には痛風の他に、生まれつき代謝機構に障害がある疾患や癌細胞が治療によって多量に崩壊した際にみられることがあります。